玉の緒会 ブログリレー12

12月といえば杵勝会歳末チャリティー長唄演奏会!と言うことで今年も行って参りました!
今回は大変有り難いことに、勝くに緒先生による事前ゼミがありました。
長唄の成り立ちから曲の時代背景やテーマ設定、聴きどころ、さらには杵勝会出演者の関係図、そもそも演奏曲、出演曲はどうやって決めてるの?などなど……ここぞとばかりに踏み入って様々な疑問を解決していただきました!

当日、日本橋公会堂は大盛況。
一階席はほぼ埋まっていたので、私は初めから終わりまでニ階席で演奏を拝見しました。
一階席のダイレクトに音が飛んでくる感じも好きですが(時々舞台上の先生と目が合う危険な席でもある…笑)、二階席の音が混じり合って客席全体に広がっていく感じも気に入っています。

長唄のお稽古を初めてから色々な演奏会に行くようになりましたが、正直なところ初めのころは耐久レースの様な感覚で聴きに行っていました笑
曲が分からない、歌詞が聞き取れない、長い、眠くなる(本当ごめんなさい…)。
今もそれが全くないかといえば、まだ割とあるのですが、最初の頃よりは素直に音楽を楽しめるようになってきた様な気がします。

今回勝くに緒先生が演奏された「おかる」と「英執着獅子」は、事前ゼミでしっかり知識を入れたものの、非常に淡々とした曲だと教えてもらっていたので、聴く側としても気合を入れて臨みました。
「おかる」は歌舞伎【仮名手本忠臣蔵】七段目の中で、遊女おかるが大星由良之助に身請けされると聞き、父母と夫に手紙を書くシーンで演奏されるそうです。
【めりやす】というしっとりとした曲調が特徴で、芝居の一部分とて大きく演出に関わる部分のようです。
忠臣蔵は大好きな作品ですが七段目は観たことがなかったので、場面を想像しながら演奏を聴きました。
もし自分が弾くことになったら覚えるのに苦労しそうな曲だ……なんて雑念を抱きながら、切ない雰囲気におかるの女性らしさと芯の強さを感じることができ、短い曲なのにとても充実感のある演奏だったように感じました。

「英執着獅子」は【獅子物】というジャンルの一つです。
獅子物といえばいわゆる獅子の頭を立ち役がぶんぶん振り回すダイナミックなイメージですが、執着獅子は古典的な女形舞踊で、手に【扇獅子】を持って踊るそうです。
「執着」と言う曲名は恋する相手に執着するところから付けられたらしく、いつの時代も恋愛に狂うというのは変わらないんだなぁと妙に納得してみたり。
30分という大曲のため聴く側もとてもエネルギーを使いますが、そこをしっかり聴かせてくれるのは流石プロ!
獅子物の代名詞【狂い】で堂々たる獅子らしさを聴かせつつも、艶っぽさと優雅さ、古典的な渋さみたいなものも感じられる演奏でした。

私事ですが、只今絶賛替手のお稽古中なので、今回は替手や上調子に注目して演奏を聴いてみました。
今までは何でもかんでも凄い!と言う感想でしたが、今回は偉そうにも「替手と上調子によって本手の聴こえ方が違うなぁ」なんて感想を持ちました。
自分で弾いているとどうしても夢中になってしまい本手を聴くことができず、自己主張が強くなってしまいがちです。
今回印象に残った替手や上調子の演奏は、主張が強い訳じゃないのに心地よく耳に残る感覚がありました。

特に印象に残ったのは杵屋勝七郎先生で、今回初めて演奏を拝見しました。
とても上品で色っぽい演奏で「吾妻八景」の上調子は聴き入ってしまいました。
「吾妻八景」は四季折々の江戸の名所や風物をテーマにており、ストーリー性があるわけではないので表現が難しい曲です。
中々良い演奏に出会えないと聞いていたので、今回の演奏が聴けたのはラッキーでした!
スピード感のある本手と、繊細な替手。
一生懸命聴かなくても音が自然と耳に入ってくる感じで、決して本手を邪魔することなく、でも引き過ぎもせず、絶妙に絡み合っていてお互いの良さが際立ち、曲の魅力が倍増しているように思いました。
「吾妻八景」の中で雅楽の音色を表現する【楽合方】という部分があるのですが、そこが特に繊細で、雅楽のことをあまり知らないくせに「これってすごく雅楽だ!」と思わず先輩と盛り上がってしまいました。
私もそう出来るように!というのはハードル高すぎますが、どの曲にも通ずる「替手や上調子の役割」と言うものが少しだけ分かった気がしました。

演奏の感想を一つ一つ書いていくとえげつない長さになってしまうので割愛しますが、今回の演奏会は曲構成もとても面白かったです。
師範演奏から始まり、存在感のある大薩摩、変化舞踊、お囃子のない演奏、ゆったりとした曲からのテンポ感のある曲、など。
最後の「娘道成寺」は杵勝会勢揃いで、幕が開いた瞬間の高揚感が半端じゃなかったです。
見た目も演奏も大迫力で最高のフィナーレでした!

玉の緒会ではよく、「耳を育てなさい」と言われます。
良い演奏をたくさん聴き、何がどう良いのか分かるように、と。
今回事前ゼミと、そこで疑問に思ったことを自分で調べたおかげで、聴くことに対して抵抗や心配がなく、いつもより演奏を集中して聴くことができたような気がします。
ありがとう事前ゼミ!
先は長いですが、三味線の技術と共に耳も成長できるように頑張りたいと思います。

私にとっては今回の杵勝会歳末チャリティー長唄演奏会で、2022年の演奏会納めです!
また来年もたくさん聴きに行ったり、演奏したり、楽しい長唄ライフが送れますように!

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